事業売却に向けた事業部の分社化
前回、友人の話から、事業売却はそうとう面倒そうだということがわかりました。
(一つ前の「会社売却と事業売却の違い」をまだ読んでいない方は、ぜひそちらを読んでからお読みください!)
売却準備として、事前に売却対象の事業に関連する資産や負債、人員の切り分けを明確にしておくことができれば、複雑さも緩和することができると書きました。
そこで、なんとか社内での切り分けてを頑張って事業部を売却するよりも、売却対象の事業を分社化する方が、売却プロセスを円滑に進められる可能性が高くなります。
今回は、事業売却の準備としての分社化という一つの方法について書いていきます。
そもそも分社化とは何か?
分社化とは、複数の事業を持つ企業が、特定の事業部門を分割し、独立した会社を設立することです。分割された事業は、子会社や関連会社として運営されることになります。
この分社化にともない売却対象の事業に関連する資産、負債、人員を独立した会社に移転させます。これにより、事業売却よりも、売却プロセスにおける混乱を最小限に抑えることができます。
事業を分社化して売却するメリット
1つの会社として売却価格の算定ができる
分社化により、売却対象の事業を明確に区分できます。会社の中の1つの事業部を価値算定をする場合は、物理的にも人的にも情報的にも他の事業とリソースを共有していることが多いため、切り分けが非常に複雑です。
分社化により、1つの会社として明確な売却価格の算定が可能になります。
デューデリジェンスがスムーズに進む
分社化されている事業は、法的にも財務的にも独立しているため、買い手側のデューデリジェンス(買収監査)をスムーズに進めることができます。
売り手側にとっても買い手側にとってもM&Aプロセスにける混乱が減ります。
従業員の混乱を防ぐ
分社化により、売却対象の事業の従業員は新しい会社の所属になります。これにより事業部の売却の場合よりも従業員の混乱を防ぐことができます。
以上のように、分社化した会社の売却は通常のM&Aと同様の売却プロセスを進めることができます。
分社化のプロセスは専門家に確認して進める
分社化のプロセスとして、会社からの売却対象の事業(資産、負債、契約、人員)の切り分けと、新しい会社への移転が必要になります。
これは法的、財務的、実務的にも複雑な作業となりますので、司法書士、社労士、税理士、会計士等の各専門家に確認して進める必要があるでしょう。
事業を分社化する場合の注意点
税務上の影響
分社化は資産の移転を伴うことになるため、税務上の影響があります。税務処理については税理士等の専門家に確認が必要です。
契約の移転
事業に関連する契約の移転には、相手先の同意が必要になる場合があります。契約の内容を精査し、必要な手続きを行う必要があります。
従業員の理解
分社化に従業員の理解と協力を得ることが重要です。ハレーションがおきないように丁寧な説明とコミュニケーションが必要です。
売却の準備によってスムーズなプロセスを
以上、事業売却の準備としての分社化という一つの方法について書いてみました。分社化にはメリット、デメリットやリスク、コストなどそれぞれ発生します。
しかし、会社売却を経験した身から言うと、事業売却において、事業の切り分けと売却プロセスを同時に行うということは、確かに面倒だと思いました。
分社化も大変ではありますが、売却の準備としての分社化と、売却プロセスとを分けて進められます。
最初から売却目的で会社を設立している経営者の方は多くないですが、事業売却も会社売却も、事前に準備することでスムーズな売却プロセスを進めることができると思います。
さてさて、事業売却を検討している友人はどうするのでしょうか?