M&Aにおいて、自社の給料や残業代の未払い状況を確認しておくことは非常に重要です。
もし未払いがある場合、買収後に買い手企業が訴訟を受ける対象となるリスクを負うことになります。
そんな可能性があるのであれば、買い手企業候補はそもそもM&Aプロセスを中止しかねません。
それでは元も子もないので、売り手企業としてはM&Aプロセスがはじまる前に未払状況を確認しておく必要があります。
手間がかかっても未払いの確認をする
給料や残業代の未払いを確認には、過去の給与明細書と勤務記録を遡って照合したり、従業員にアンケートやヒアリングの実施(必要であれば匿名で報告してもらう)によって行います。もし社内調査で不十分な場合は、弁護士や社労士などの第三者による調査という方法もあります。
これらの方法を用いて、未払いの有無を徹底的に確認し、問題がある場合は速やかに解消していきます。
会社側が悪気がなくても、何かの手違いで未払いとなっている可能性もあるため、M&Aプロセスの準備段階としてしっかりと確認しておくことは必須だなと当時も思いました。
未払いの実態を虚偽なく開示する
売り手企業は、給料や残業代の未払いがある場合、買い手企業候補に対して正直に正確に開示する必要があります。
未払いを隠蔽したり、虚偽の報告をしたりすることは、買い手企業との信頼関係を損なうことはもちろん、買収後に未払いが発覚した場合、売り手企業の責任のうえでM&A解消となる可能性もあります。
未払いがある場合は解消しておく
未払いがあることがわかっている場合は、M&A開始前に速やかに解消しておきましょう。
例えば創業でバタバタしていた時期や、給与規定が曖昧だったりした時期がある場合は、遡って確認して、発覚した場合は速やかに解消していきます。
悔しい給与支払いのエピソード
知り合いの経営者に聞いた話です。
彼の会社では、給与未払、残業代等未払いはありませんでした。ただ悔しい給与支払いのエピソードとして、入社後1週間で急に出社しなくなった従業員がいました。
人間関係や業務が合わないことも考えにくく、役員が何度か日中に家に出向きましたが、毎回不在だったようです。その従業員は、そのまま退職することになるのですが、退職になるまでは、非常に不本意だが、社労士に相談し労働基準法に基づいて、給与は正しく支払いったそうです。
長く経営しているとこういうケースもあるもんですね。 ただ感情は置いておいて、法律に遵守したそうです。
コストがかかっても未払の確認や解消をする価値がある
上記のとおり売り手企業にとっては、未払いの確認や、未払があった場合の解消、納得のいかない支払い、などのコストが発生します。
しかし、買い手企業にとっては予期せぬ金銭的、時間的コストを強いられる可能性があり、M&Aの価値を損ないかねないので、買収後の訴訟リスクを強く嫌がります。(おそらく10段階あったらトップレベルで懸念しています)
譲渡価格の減額要請や、M&Aの解消になりかねないことと比べたら、未払の確認や回収のコストは安く済んだと思えるでしょう。
そもそもM&Aに関係なく未払いがない会社であることが大前提ですが、M&Aプロセスが始まる前には徹底的に調査をしておきましょう。