株式譲渡後の運転資金必要額を買い手企業に示せる様に準備する

複数の買い手企業候補から、割と多くされた質問に「運転資金はいくら必要ですか?」があります。

具体的に買収を検討していないと出てこない質問なので、ゾクゾクしたのを覚えています。

目次

買い手企業にとって、経営に必要な運転資金額は重要な情報

買い手企業にとって、必要な運転資金額とその計算方法や考え方は、非常に重要です。

運転資金がおよそいくらあれば事業が回っていくのかが分かれば、

  • 経営していくために、どれだけ現金を確保しておけばよいか判断できる
  • 買収後の企業を成長させるためにいくら予算増加が必要か検討できる
  • 買収後の企業からいくらキャッシュフローを抜き出せるかや、回収期間がわかる
  • 買収する自社と、買収対象の企業の財務を健全化するラインがわかる
  • 銀行や株主、ファンドに投資した人たちに説明しやすい

など有利に検討ができます。

必要な運転資金は経営スタイルやビジネスモデルによっても違う

私の場合は、おそらく計算が簡単でした。
無借金でしたし、売掛金がほぼゼロで、棚卸資産回転率も分かっていましたので、期間中の銀行残高の上限と下限の幅が、およその運転資金でした(キャッシュ・コンバージョン・サイクル的な計算)。

あるいは、手形取引がない前提で次のような計算方法でもいけます。

1)運転資金=(現金を含まない流動資産)ー有利子負債を含まない流動負債
2)運転資金=(売掛金+棚卸資産)ー買掛金

言い換えているだけで、1)と2)はどちらも同じものです。

「運転資金はいくら必要ですか?」は2つの意味があるので注意

「運転資金はいくら必要ですか?」の質問には2つの意味があるので、前提を確認して答えられるとベターです。

1つは、財務・会計的な意味での運転資金で、上記の計算式などで判断できる運転資金
もう1つは、実際いくらあれば回って行くのかの意味での運転資金、キャッシュフローの意味

例外はあるかもしれませんが、後者の意味のほうが少ない金額になるはずですし、攻めた数字と言えます。

いずれにしても売り手企業側の意見でしかないので、必要な運転資金額は、買い手企業が責任を持って答えを出さないといけないものです。

前受金があるとキャッシュフローに強い!

真似しやすいかどうかは別として、私の経営方針として、顧客から依頼を受ける時点で契約金額の50%の前受金をもらう方式を採用しています。

預り金ですから、納品し契約を達成するまでは貸借対照表の「資産の部」に組み入れることはできませんが、とはいえ、現金がある状態でしたので、年間の売上高と比較しても、キャッシュフロー的な意味の運転資金は非常に少ない金額で経営を回すことができていました。

それでももし大量仕入れなどでキャッシュフローがさびしくなるときは、「納品の前倒し→残金回収→現金を増やす」ができる経営をしていました。

必要な運転資金に回答できるよう準備しておく

運転資金について書きましたが、これから売却する会社が大きな売上になっていれば、ずばりこの質問か、それに近い質問はあると思います。

必要な運転資金の額は、会社の成長や季節要因によっても変化しますので、これらの質問に回答が出せるよう情報の整理と、その根拠について準備をしておいてください。

税理士、会計士の方に定期的に意見を求めておくのもとても良いと思います。

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