買い手企業と直接決めることとは少しずれるかもしれませんが、本契約の中でお互いの損害賠償についても取り決めをすることになります。
損害賠償の上限額や、株式を譲渡する株主が複数いる場合の連帯保証の範囲は調整ができるという話を別でも書いているのでそちらもご参考ください。
会社売却後に受ける損害賠償の可能性
基本的には、買い手企業売り手企業がお互いに損害賠償請求をしなくて済むようにデューデリジェンス(DD)を詳細に実行します。
そして、開示する資料や情報が正確であるという売り手企業の表明保証によって、お互い信頼して本契約へと進んでいくのですが、売り手企業が開示する資料や情報が故意過失を問わず誤っていたり、漏れていると買い手企業には損害が発生してしまいます。
損害請求は売り手企業としても大きな損失ですのでこれを可能な限り回避しておかなければなりません。
損害請求を受ける項目の例
損害請求を受ける項目の例を挙げます。
繰り返しになりますが基本的にはデューデリジェンス(DD)で詳細に確認されるものですが、お互い確認不足で、かつ後から発覚すると揉めやすいです。
- 隠れた負債 (例:会社が連帯保証人になっているが情報共有されなかった)
- 正確ではない財務情報 (例:回収見込みのない売掛金があったが問題が共有されなかった)
- 競合回避義務の違反 (例:会社売却後に競合する事業を開始してしまった)
- 秘密保持義務の違反 (例:会社売却後に譲渡対象会社の機密情報を第三者に漏洩してしまった)
- 環境汚染 (例:事業が原因での土地や施設に関する環境汚染が後から発覚した)
- 法律違反 (例:労働法、税法、その他の法律違反が発覚した)
- 重要な取引先の喪失 (例:会社売却後に会社売却または売り手企業が原因で主要顧客が取引を停止した)
- 契約上の不達成 (例:会社売却前に締結された契約が、履行できない状態だった)
- 隠れた権利侵害 (例:第三者の知的財産を侵害していたことが発覚した)
- 未払い給与や退職金 (例:従業員の未払い給与や退職金が発覚した) 等々
会社売却後の損害賠償請求が予想されるときの対策
大前提は、すでに分かっている問題は経営者の責任ですべて解決しておきます(当たり前ですね)。
しかし問題が現在進行中であったり、すぐには解決ができない場合は、M&A仲介会社の担当さんと相談・協議して最善策を探すようにします。
ここはできるだけM&Aの経験値の高い方のアドバイスを得るのが良いと思います。
後々トラブルにならないようにするためには、(上手な伝え方を工夫する必要はありますが)正しく開示することが大切です。透明性というやつです。
それによって譲渡金額の減額があるかもしれないですが、問題を許容して買い手企業との合意に至る可能性があります。
不都合な情報を開示して合意する
私の経験でも、自社の営業所用に借りた物件が「建築許可を取らずに増築をしていた物件」だったことがわかり、予めそのことを共有していました。
そうしたところ、本契約書案では「問題にしない」という補足が追加されていました。
それくらい、M&Aにおける損害請求が発生しないように関係者全員で注意を払っているのだと感じました。