M&A売却額に影響する「買収提示額」以外の7つの条件

前回の記事で、複数の買い手企業からの意向表明があると高値になるということを書きました。
【関連記事】複数の買い手企業が買収したいとき売却額は跳ね上がる

今回は、買収提示額以外の買収条件についてです。この比較検討も売却額に影響があります。

目次

排他的独占交渉権をどの企業に与えたらよいのか?

次に問われるのが「排他的独占交渉権をどの企業に与えたらよいのか?」です。

意向表明が複数あったとしても、それらすべてに「M&Aの交渉を始めましょう!」とするわけにはいきません。

なぜなら買い手企業の買収意向を受けるということは、その企業とのみ交渉をおこなうことになるからです。
さらなる守秘義務も発生しますし、買収意向を受諾しなかった企業とは交渉することはできません。

買収提示額以外の買収条件とは?

最も気になる買収提示額のほかには、たとえば次のような買収条件があります。

  • 残る社員の雇用や、給料含む待遇をどうするか
  • 会社買収後の経営計画
  • 買収までのスケジュールや、デューデリジェンスの難易度
  • 買収の資金調達方法や、ブレイクになる条件
  • 現経営者の立ち位置、ロックアップ期間と報酬の設定
  • その後の経営がうまくいった場合の条件
  • 買い手企業の熱意

以下に、それぞれ解説をしていきたいと思います。

残る社員の雇用や、給料含む待遇をどうするか

基本的に、友好的なM&A案件となっているはずですので、ニュースや映画で観るような買収後、即リストラというようなことはありません。
それでも、儀礼的、商慣例的に「雇用や待遇は、これまでの条件以上を維持します」みたいなことが盛り込まれています(買い手企業を募集する資料にもたいてい盛り込まれる)。

会社売却しました、後はしりませんよろしく、では残る社員さんたちに申し訳ないですし、本末転倒になってしまいます。

会社買収後の経営計画

会社買収後の経営計画が、ふわっと示されます。
というのも、買い手企業さんもまだ経営の中身を正確に把握できていない段階のお話なので、計画と呼べるほど具体的なものは難しいはずです。

それでも「このようなシナジーを見込んで、こんなことをします。ここを伸ばしていきます」と提案されると、現経営者としては買収提示額とは別に魅力を感じますし、心がおどると思います。

買収までのスケジュールや、デューデリジェンスの難易度

そこまで差はないと思いますが、双方が契約する「最終合意」までに想定している期間にはばらつきがあります。
また、簡単なデューデリジェンスしかしない買い手企業もあれば、大手企業や銀行付きのファンドの場合は、かなりしっかりと調査をするので、デューデリジェンスの期間や難易度には差があります。

とはいえ、事前に予想した計画どおりに進まないということも普通にあります(私のケースもそうでした)。

買収の資金調達方法や、ブレイクになる条件

買収するにあたって、どのような資金調達をするか、示されることがあります。
すでに買収資金があるのか、これから銀行の融資を付けるのか。

銀行融資を活用するM&Aも少なくありませんので、融資が受けられなかった場合、交渉自体が終了するのか、継続するのか、これも検討が必要な条件になります。

買い手企業の都合でしかないので若干、納得しづらい面もあったのですが、巨額である以上そういうもののようです。

現経営者の立ち位置、ロックアップ期間と報酬の設定

現経営者の立ち位置は、買収後、どのような条件で考えているのか示されることがあります。
中には現経営者がいきなりいなくなっても問題ない会社もあるとは思いますが、ほとんどは十分な引き継ぎ期間(現経営者の拘束期間)が必要です。

現経営者が引き続き、経営に残るのか、その期間は何ヶ月、何年か、その期間の報酬はどのように考えているのか。
ただしこの条件は、追加の交渉をしながら決まっていくことも多いようです。

その後の経営がうまくいった場合の条件

M&Aの商談が事業年度の終盤に近い場合、当期の決算をまたぐ可能性があり「業績が伸びていたら、それを買収価格に反映してもらいたい」と交渉し条件に盛り込んでもらうことも可能です。

私はこの条件をトップ面談の際に交渉しわすれてしまい、最終期の業績がとても伸びたのでかなりもったいないことをしました…‥。

買い手企業の熱意

意向表明書に書かれませんし、定量化して評価できる条件ではないのですが、書面に書かれた条件のほかに、買い手企業の熱意の差が、条件の1つとしてどうしてもこちらの比較検討のテーブルに上がってきます。

私のケースではそれはなかったのでわかりませんが「買収提示額は高い、でも熱意で言うと他社さんのほうが高いんだよなー」というとき、きっと迷うと思います。

買収提示額か、その他の買収条件かは迷います

最終的に高い売却額になる会社は、一番高い買収額を提示してくれた買い手企業を選んだ場合、ということになるでしょう。
ここまで会社を大きくしてきたオーナー経営者としては、売却後の手残り金額で選んでよいのだと思います。

しかし、買収提示額を超えるその他の魅力的な買収条件を提示されてしまったら……?
すごく迷うと思いますし、その迷いも含めて、納得のいく答えが見つかるといいなと思います。

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