会社売却時に必要な書類を確認しよう!(就業規則、賃金規定、雇用契約書など)

前回、「会社売却に向けて社内規定を整理し、買い手企業に提出しやすくしておきましょう」というお話を書きました。

特にその中でも、M&Aで重視される雇用に関する規定と、36協定や、雇用契約書について、かなり影響が大きいので掘り下げて書きたいと思います。

これらの書類は、デューデリジェンス(DD)の時点で提出することになります。
もし、「ないです」「作ってません」ということになると、デューデリジェンス(DD)を乗り越えられなかったり、買収価格の減額を提示されかねませんので、心当たりや、知識があやふやだと思う方はこのお話をよく読んでいただければと思います。

目次

就業規則

就業規則は会社経営に必須の社内規定です。
就業規則があることで、従業員は労働条件を確認することができ、平等に働くことができます。

これは経営統合後も同様で、同じ会社なのに待遇に差があれば不満にもつながりやすいですし、マネジメントがしづらくなりますので、どのような就業規則で従業員が雇用されてきたかは、買い手企業にとって、とても重要な情報です。

経営統合により、売り手企業と買い手企業、それぞれの従業員が、一部の就業規則の条件で待遇が悪くなることもありますので、差が大きすぎる場合は買い手企業がとても気を使います。

賃金規定

賃金規定は、就業規則といっしょに規定されることがほとんどです。

賃金規定は、会社と従業員との間での約束ごとですので、株式譲渡によって経営権が移ったとしても、雇用を継続する限りは株式譲渡前となにもかわらないものです。
賃金の計算根拠になります。

買収元企業と賃金規定の差があれば、買い手企業からすれば買収コスト増加の要因や、リスクになります。
会社売却後に従業員の待遇が悪化すれば、従業員から恨まれかねないので会社売却後の待遇には私も細心の注意を払いました。

退職金規定

賃金規定と同様、退職金規定も就業規則といっしょに規定されることがほとんどです。

M&Aでは、株式譲渡後や経営統合後に、自主退職やリストラなどが発生する可能性がありますので、退職金規定によってそれらにかかる費用を見積もっているようです。

社労士さんに聞いたところによると、最近は正社員でも退職金ゼロの会社も増えているそうで「退職金ゼロだと買収する買い手企業もコスト計算しやすいだろうな」と思ったことがあります。

36協定(時間外労働・休日労働に関する協定届)

労働基準法第36条に定められていることから「サブロク協定(36協定)」と呼ばれている書類です。

正式名称を「時間外労働・休日労働に関する協定届」といいまして、会社と代表的な従業員との間で、労働時間や残業時間を取り決めた協定書で、基本的には協定の内容を越えて働いてもらうことができません。

36協定を超えて労働する場合、つまり1時間でも残業をするときは、「36協定届」という書類が労働基準監督署に提出されていなければなりません。
これらが適切に手続きされていないと、会社側が労働基準法違反になります。
やばいですね。

雇用契約書、従業員の履歴書

基本的に売り手企業としては会社売却後も「従業員の雇用を守ってほしい」と望んでいますが、買い手企業もまたノウハウを有している従業員の雇用継続は利益の根拠で望んでいますので、雇用契約書も重要な確認の1つです。

雇用契約は従業員と会社との契約なので、経営者が変わっても雇用契約には影響はなく、1人1人契約を結び直すとかは必要がありません。

それゆえに、雇用契約書や履歴書は適切に次の経営者に引き継ぐ必要があります。

各規定は社員が閲覧できるように

就業規則や賃金規定、退職金規定、36協定は、社内通知が義務付けられていますので、社内で従業員が閲覧できるようにしておく必要があります。

社員に、どこにあるのか、どのように閲覧できるのか、いつ閲覧できるのか、のほかに「読んでおいてください」のアナウンスもしておきます。
社内クラウドに保管して、オンラインで閲覧できるようにしておくのもよいですね。

逆に雇用契約書は、雇用に関わる人物しか閲覧できないようにしておきます。

規定と労働実態が一致していない場合は注意して

これらの書類は、ネットに落ちているテンプレを活用して作ることもできますが注意が必要です。
テンプレを活用しても良いのですがちゃんと中身を理解して作らないと、トラブルや損失を招く可能性があります。

もしこれらの規定や契約や協定と、社内の労働実態がずれてしまっている場合は、M&Aに取り組み始める前には、労働実態のほうを規定や契約や協定に合わせておく必要があります。そうなったら売上や利益にも影響しますので、修正がたいへんですね。

長く経営していると、法律が変わることもありますので、書類の修正・更新が必要かもチェックしたり、社労士さんからアナウンスをしてもらうようにしておくと漏れを少なくできます。

なぜ雇用関係の規定や契約や協定がM&Aでは重要?

なぜ、特にこれらの雇用関係の規定や契約や協定がM&Aの会社売却で重要かというと、賃金の支払いは会社の義務であり、残業時間の計算の根拠になっていたり、残業代の未払やそれによる従業員や元従業員からの訴訟リスクがどの程度あるのか、買い手企業は買収前に実態を正しく把握をする必要があるからです。

訴訟リスクが高すぎたり、未払賃金や残業代の金額によってはその企業を買収できないか、訴訟リスクの分だけ買収価格の減額を要請しなければなりませんし、要請する根拠になってしまいます。

その意味でもM&Aで会社売却を目指すならば、雇用関係の規定や契約や協定は、必須で重要な準備の1つです。

社労士に依頼していれば基本的にはそろっているはず…

一人目の従業員の雇用から社労士さんに作成や手続きを依頼していた場合は、これらの書類はまず揃っているはずです。

私が売却をした会社でも、社労士さんに一式依頼していたので、これら書類は全部揃っていましたし、デューデリジェンス(DD)の際にも問題はありませんでしたが、それでも創業時にこれらの規定や契約や協定について漏れなく理解していたかというと全然そんなことはなく、M&Aにここまで影響するとも当時は知りませんでした。

今回のお話で初めて知った情報が1つでもあったなら、会社売却の株価に大きな差が出る可能性がありますので、本当に確認と調整をおすすめします。

( 免責事項 )
当記事のコンテンツ・情報について、正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。 当サイトに掲載された内容によって生じた損害等は、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
良い記事だと思ったら、保存しておいてください
目次