「御社の業界特有の法律はどんなものがありますか?」
デューデリジェンス(DD)で実際にされた質問です。
買い手企業は、売り手企業の事業や業界に関する法律に詳しくありません。
だからこそ買い手企業は、デューデリジェンス(DD)の際などに、法律に関連する質問をたくさんすることで、理解をしようとします。
売り手企業としては、正確に答えられないと、法律に対する姿勢やコンプライアンスを疑われてしまう一方、答えられるこで信頼を獲得できます。
法律に対する質疑に向けて、どのように準備していったか書いていきたいと思います。
事業や業界特有の法律をピックアップしておく
僕の経験のなかで販売業の会社を経営していた際、業界外の人はもちろん、業界内でも正しく理解できていない人もいる程ややこしい業界特有の法律がありました。
関連する全ての法律や、一般的にも知られている法律まで網羅する必要はありません。
ただ、事業や業界特有の法律については正確にレポートできるようにピックアップしておき、業界を知らない人に対して、わかりやすいように説明できるように整理しておきました。
法律に対してどう運用しているかもレポートできるようにする
業界特有の法律に対して、どのように運用しているか、という質問にも答えられるようにしておく必要があります。
例えば、僕の経営経験でも実際に下記のような法律にもとづいた運用をおこなっていました。
◯社内の業務フロー
行政の承認なしには販売できない運用マニュアルにしていました。また社員に対して、重要な法律については書面で読み合わせをすることを徹底していました。
マニュアル化しても、現場ではイレギュラーケースや想定外のことが発生するので、その際は役員にエスカレーションして新たなマニュアルを作成していました。
◯社外との取り決め
取引先とのルールを取り決めそれに基づいて運用を進めていました。取引先とは頻繁に法律や行政手続きの情報交換をしていました。また、取引先との業務フローが変化した際は、弁護士に契約書の確認や更新をお願いしていました。
◯事業に関する免許や、行政への手続き
事業の運営に必要な免許を取得し、その免許が使用できる範囲を社内で共有して運用していました。また行政への手続きについては、どのタイミングでどのような申請をするかをマニュアル化していました。
実は、運用を整理していた際に、事業に必要な免許の使用ルールである「使用した際には日付と場所を書面へ記録すること」が数ヶ月漏れており、慌ててGoogleカレンダーと照らし合わせて、記載しました💦
事前に気がつけて良かったのと、準備の大切さを痛感したエピソードです(^_^;)
これらの業界特有の法律にもとづいだ運用について、業界を知らない買い手企業候補でもわかるようにレポートの準備をおこないました。
関連する法律の変更や更新情報をキャッチしておく
関連する法律について、古い情報のままだったり、更新していることを知らず、デューデリジェンス(DD)での法務チェックで発覚したりすると、信頼を損ねかねません。その事業のプロとして恥ずかしいですね。
そのため、関連法律については定期的に行政に確認に出向いたり、googleアラートを使って最新の情報をキャッチするようにしていました。
法律が未整備な場合、各行政や関連組織に確認のうえ適切に運用する
業界によっては法律が未整備だったり、制定はされているが施行前の法律があったりします。
業界のリーディングカンパニーであれば、状況を適切に把握し、各行政や各関連組織に確認のうえ、最適な運用をしていく必要があります。
小さい業界ながらシェア1位でしたので、法律が未整備の中で、適切に運用し業界の見本となっていたことは、買い手企業候補からも高く評価されました。
売却後の事業統合でも法律知識と運用の引き継ぎをする
売却後の事業統合においても、新しい経営者はそもそも買収企業の法律をくわしく知らない、ということを認識しておく必要があります。
実際、自分には業界特有の法律がいつの間にか当たり前になっていたのですが、これまで業界にたずさわっていない新経営者にとってはわからないことだらけなんだと、引き継ぐ際に度々思いました。
そのため引き継ぎの際には、しっかりと新しい経営者に対象の法律とその運用について共有していくことが大切でしょう。場合によっては弁護士に同席してもらっても良いのかもしれません。
以上、法律に関する把握と適切な運用は、会社の信頼に関わりますので、買い手企業候補からのどんな質問にも答えられるように、しっかり準備をしておきましょう。