リスクマネジメントについても、「これまでにどんな取り組みをしてきたか」「リスクに対してどんな備えているか」など、デューデリジェンス(DD)で問われます。
リスクマネジメントの方法は、体系的かつ奥深く、勉強できるサイトや書籍が豊富にあるので、ぜひ調べてみてほしいです。
またお断りをしておかねばなりませんが、リスクマネジメントの取り組み内容を具体的に書くと、会社を特定する要素が増えてしまうのでフィクション的に書いています。ご了承ください。
トップ面談や、デューデリジェンス(DD)で問われるリスクとは
本来、リスクマネジメントとは、自社の事業が安定的に成長するために、発生するさまざまなリスクに対して、対応策や規則、マニュアルなどで備えておくものです。
M&Aのプロセス中に必要になるリスクマネジメントは、それとは少し違って、買い手企業から見たリスクについて、買収して問題ないかを確認するためで、事業のリスクがコントロールできていることを正しく説明する目的になります。
どういう事業リスクがあるのか? リスクは無数に存在する
買い手企業からすれば、未知や未経験の業界であればあるほど、事業のリスクはすごくたくさんあるように見えますし、警戒しているものだと思います。
実際にリスクは無数に存在しますので、結局のところ何がポイントかというと、
- リスクが予防やコントロールできているかどうか
- コントロールできないリスクの発生頻度は高いかどうか
- コントロールできないリスクは許容できるか否か
- コントロールできないリスクが発生したときに事後的なリカバリーが可能かどうか
になります。これらで「問題ナシ!ヨシ!」と判断できるかどうかが重要ということになります。
リスクに備える4つの区分
実際に経営はこの視点でリスクマネジメントしていましたし、デューデリジェンス(DD)でも下記のように説明したのですが、リスクは4つの領域に区分することができます(私のオリジナルです)。
4つの領域とは、
- 予期できる、自社責任のリスク
- 予期できる、自社責任ではないリスク
- 予期できない、自社責任のリスク
- 予期できない、自社責任ではないリスク
です。
リスクの例を挙げます。
予期できるリスク 領域①と②
予期できるリスクとは、再発の可能性があり、リスクが繰り返されていたり、社会的に他社の過去事例でも頻発してきたようなリスク群です。
予期できるリスクは、例えば安全衛生の運用のように、重要性や損失の大きさ、発生頻度の高さなどで、対策の優先順位を決めるなどして、リスト化して事前に把握することができます。
そしてリスト化したリスクについては、
- そのリスクが発生しないようにする取り組み
- そのリスクの発生頻度を下げる取り組み
- そのリスクが発生したときの対処方法
などで、備えることができます。
M&Aでは、この予期できるリスクへの対策や規則など多く用意しておくことで、発生頻度も下げることができ、買い手企業から見たリスクを下げることができます。
予期できないリスク 領域③と④
予期できないリスクとは、たくさんシュミレーションをしていたとしても、過去に事例がないとか、発生頻度が低すぎるなどで想像しづらく、予め備えづらいリスク群です。
予期できないリスクが発生することは、リスクではありますが、それ自体は問題ではありません。
予期できないリスクが発生したときに、これまで実際にどのような対応をしてきたのか、対策した事例の中身が重要です。
場合によっては、自社のビジネスモデルを柔軟に変更する対応も必要です。
リスク発生後の対応能力がある会社であることを証明できることでも、買い手企業から見たリスクを下げることができます。
また今だと、予期できないリスクを減らすために、AIの活用も有効な手段かもしれません。
予期できないリスク発生後の対応例
・コロナ禍
→コロナだからこそ自社の商品が必要であるし、有益である、というストーリーを新しく作り、営業戦略をシフトしました。
・社員の突飛な行動
→いわゆるバカッター的行動を予想できませんでしたが、スピード対応をして、社員に注意勧告とともに、じっくり教育時間を取りました。
・もらい事故
→警察や弁護士、保険会社への連絡や調整、社員のケア、補償など必要な取り組みをして、記録し、社内共有しました。
報告のレベルは影響度合いによってさまざまでしたが、リスクの認識と対策姿勢の盤石さが伝わる報告ができるようにしました。
社会的に自社責任のリスク 領域①と③
社会的に自社責任のリスクに関しては、可能な限りスピード対応して、リスクが外に飛び火しないことを最優先に取り組むようにしました。
そして、発生してしまった自社責任のリスクについては、ご迷惑や被害を与えた先があれば、謝罪と、補償含め、誠実に対応し、その記録を残すようにしました。
社会的に自社責任ではないリスク 領域②と④
社会的に自社責任ではないリスクの場合は、基本的に、環境や他社・他人の要因のものになりますので、発生したリスクに合わせて後の先が取れるよう、じっくり腰を据えて対応するものが多くなります。
相手や対象にキレ散らかしても解決しないリスクが多いので、合理的なゴールを再設定して、自社の損失が少なくなるような対策が多くなりました。
M&Aにおけるリスクマネジメント まとめ
こまかく説明しましたが、まとめとしてはM&Aプロセスで伝えるべきリスクマネジメントの取り組みは、
- リスクマネジメントとして予期できるものは、こんな備えがありますよ
- 予期できないリスクも、これまでこのように柔軟に対応してきましたよ
- 社員のエスカレーション体制はこれです
という報告ができればOKかなと思います。