M&Aの会社売却では、簿外資産がとても良い意味で交渉に有利にはたらくことがあります。
簿外資産は、とても大事です!
……と言いたいところですが、簿外資産には良い簿外資産と、悪い簿外資産がありますので正しく理解して、正しく準備していきましょう。
特に気をつけるべき悪い簿外資産とは?
悪い簿外資産とは、いわゆる二重帳簿や、裏金とか、不正会計とか不正取引の結果、本来の会計帳簿や試算表とは別に作られている帳簿のことです。
詳細を解説できるほど私も悪い簿外資産の知識がないので掘り下げを割愛しますが、悪い簿外資産のある会社はM&Aでは非常にトラブルになりますし、それ以前に税務署に見つかればいいのに。
悪い簿外資産ほどではないですが、経費項目の振り分けなどで正式版の手前の検討途中、作成途中の試算表・貸借対照表・損益計算書などが残っているのも二重帳簿の疑いをかけられやすいのであまりよくないです。
良い簿外資産とは?
M&Aに向けては、ここで説明する良い簿外資産を積み上げていくことが望ましいです。
良い簿外資産とは、貸借対照表上には掲載されないけど、会社にとって経済的価値のあるものです。
良い簿外資産には例えば次のようなものがあります。
知的財産
- 特許
- 商標権
- ブランド価値
- のれん価値
- 顧客データベース
- 研究開発成果
- 技術ノウハウ
- 戦略的優位な事業提携、等々
減価償却済の設備投資
設備投資をした結果、減価償却の期間が終わって会計上は1円とかになっているけれど、現在も市場価値としての経済価値の高いものは、良い簿外資産の筆頭です。
30万円以下は減価償却せずに単年で経費処理できるようになっていますので、これらも含みます。たとえばPCやスマートフォン、プロジェクター、絵画などです。
保険の解約払戻金
積立型の保険金を支払っていて掛け金が経費処理されているけど、解約したら払い戻しが発生する契約の保険積立金も、良い簿外資産に該当します。
法人だと中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)もよく活用されています。
これらの良い簿外資産は、株価算定や売却価格のプラス要因になりますので、漏れなく金額感と共にリスト化しておくとよいと思います。
簿外負債とは?
簿外負債には例えば次のようなものがあります。
リース契約の残金
リース契約をしている場合の、契約残期間とリース代金などは、貸借対照表には記載されないけれど、将来的に支払いが決まっているものです。
保証人
法人がなんらかの債務の保証人になっている場合は簿外負債とされます。
賞与引当金や退職給付引当金
雇用において、雇用契約に基づいて賞与や退職金の引当がありますが帳簿に記載しない場合はこれらも簿外負債になります。
これらの簿外負債が「株式譲渡した後から出てきた!」となるとよろしくないので、簿外負債も正しく伝えておいたほうがよいものです。
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悪い簿外資産、良い簿外資産、簿外負債については、どれが該当するか依頼している会計士や税理士の方に聞いてみてください。
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