M&Aの準備段階では、社内の業務負担が極端に偏ることがないように調整をしておくことが重要です。
負担の偏りがある状況では、売却後に下記のようなリスクが残ることが考えられます。
- 負担を受けている部門でトラブルの発生確率が高まる
- 負担を受けている社員の退職リスク
- 経験の浅い新経営者が負担のリカバリーや調整をできない
- 不満が生まれ社内雰囲気が悪化する
このようなリスクが残ると、売却後に売り手企業にも買い手企業にもリスクヘッジのコストが発生します。
過去に僕の会社も一部、負担の偏りがあったため、業務量の調整、属人性の排除を進めていきました。実際に自社でおこなった調整を書いていきます。
パツパツにならない程度に業務量を調整する
業務の負担を調整するために、全力の忙しさを100%とした場合、各部門の日々の業務を90%程度の負担で回ることを目標としました。
過度な負担があると、イレギュラーへの対応が難しくなり、トラブルが発生しやすくなります。これが会社全体の生産性を下げる要因となっていました。
負担を90%程度に調整することで、イレギュラーにも柔軟に対応できるようになりました。また、時間や業務に余裕ができたため、作業の見直しや質の向上、業務改善にも取り組めるようになり、生産性が向上し、業務フローがスムーズに進むようになりました。
一方で、負担が小さすぎると、暇になり余計なことをしたり、人間関係に意識が向きすぎたりして集中力が落ち、生産性が下がることもわかりました。そのため、90%程度の負担で回るよう、人員配置、業務配分、業務環境の見直しをおこなっていきました。
属人的な体制にしない
社内の負担の調整の一環として、属人的にならない体制を構築しました。
「◯◯くん、申し訳ないけど、今回頑張ってくれるかい?」
みたいな感じで、特定の従業員に負担をかけたうえでのプロジェクトの達成やトラブル解決は、長期的な観点から見ると危険です。また、負担を受けている従業員の退職リスクも発生します。
属人的なオペレーションは脆弱であり、崩壊のリスクが高くなります。仕組み、ルール、マニュアルを整備すべきです。
定期的な従業員への聞き取りも大事、ただし客観的な判断を
従業員に負担について直接聞き取ることも効果がありました。
実際の聞き取りで、1部門に業務の負担が偏っていることがわかりました。営業部門は口が上手いため、本来営業部門がやるべき業務を、しれっと管理部門にやらせていたのです。方針を理解させたうえで、業務を戻すように指示しました。
大きくなくてもこういった状況を放置しておくと、不満が溜まり社内の雰囲気が悪くなります。そういった意味でも現場や従業員への聞き取りは大切でした。
別で「全力で忙しい状態の100%を超えて120%です〜」という従業員がいたのですが、状況を分析する限りはそこまでではありませんでした笑 従業員のポジショントークの可能性も考慮し客観的な判断をおこないました。
負担の偏りがない状態は生産性が高まる
非常に興味深かったのは、負担の偏りを調整したあとは、普段の1.2倍の販売量、売上になったことでした。
従業員の誰も疲弊することなく「今月の売上げ、すごく良かったのに大変じゃなかったです」という声を聞けたのは嬉しかったです。
負担の調整はリスクを無くすだけでなく、生産性を高めるプラスの要素もありました。
本来、売却時の会社は「持続可能な生産性の高い仕組み」になっている状態で引き継ぐことが望ましいです。
このような会社の状態で売却できれば、売却後に新経営陣が業務フローや組織体制を変更してトラブルになったり業績が落ちても責任の所在が明確になり、売り手企業の責任を問われるということもないでしょう。