売り手企業は買い手企業に買ってもらう側ですが、どの買い手企業に買ってもらうかを選ぶ側でもあります。
僕がM&Aを経験したうえで、売り手企業として主体的に選ばなければいけないポイントが4つありました。
会社売却によって得たい目的や優先順位を選ぶ
M&Aによって得たい目的は経営者ごとに様々あると思います。例えば以下のようなものが目的となるでしょうか。
- 売却金
- 自身の引退
- 次の挑戦
- 家族の幸せ
- 育ててきた会社のさらなる成長
- 従業員の幸せ
- 顧客への貢献
- 業界の発展
こういった中から自分の目的と優先順位を選んで答えをだしておきます。全ての目的が達成できることがベストですが、最低限達成したい譲れないラインも決めておきました。
逆に言えば、自分が選んだ目的に合わなければ、売却したい相手にはならないということがわかります。
ちなみに、僕の場合は売却金の優先順位が高く、自身の引退は優先順位が高くありませんでした。そのため現在も、売却した会社と顧問契約を結んでいます。
アタックリストに掲載する買い手企業候補を選ぶ
M&A仲介会社が提示してくれるアタックリスト一覧の中から、積極的に営業をかけてほしい会社を伝えたり、逆に営業の対象から除外してもらうことも可能です。
さらに、「アタックリスト一覧には載っていないが、こういう会社は営業対象に追加できないか」とアタックリスト一覧に載せてほしい希望も出しました。
このようにアタックリストの時点から売り手企業は買い手企業候補を選択していくことができます。
トップ面談をして交渉を継続する買い手企業を選ぶ
M&Aプロセスにおいては、トップ面談を希望してくれる買い手企業候補があれば、何社とも面談をおこなうことができます。
買い手企業候補と交渉の際に、条件が合わない場合は、交渉を継続するかを選ぶことができます。
意向表明を受ける買い手企業を選ぶ
意向表明を複数社からもらった場合は、もっとも条件に近い買い手企業候補を選び、基本合意に向けて進めていきます。
基本合意以降は合意内容に従ってM&Aプロセスを進めることになるため、買い手企業を選ぶことができるのは基本合意前までとなります。
どの段階でも主体的に選ぶことができる
以上のように、売り手企業は、アタックリストで選べる、トップ面談で選べる、交渉を継続するかも選べる、意向表明で選べる。とどの段階でも主体的に買い手企業を選ぶことができます。
先日、株式譲渡をした友人が
「初めてのM&Aだったので、自分で決めることと、M&A仲介会社にお任せして進めてもらうことの境目が曖昧になるので、順調に進んだとも言えるし、ふわっと進んでしまったとも言えました」
と話してくれました。
確かに、M&A仲介会社さんがお膳立てをきっちりしてくれてスイスイと進んでしまうこともあります。
M&Aプロセス中は、目まぐるしく状況が進むため、ついつい「どう売るか」とか「問題なく進むか」に意識が向きがちになりますが、一つ一つ「自分で選ぶ」をしていくことが大切なんだと当時を振り返って思います。