株式譲渡契約では、売り手企業が株式譲渡後に新規事業を立ち上げる場合、買い手企業の利益を保護するために、いくつかの制限が設けられることが一般的です。
これらは売り手企業にとっては制約を受ける話になるので、お互いに話し合って取り決めをする項目となります。
同業・競業の禁止
株式譲渡契約には、基本的に同業禁止または競業禁止条項が含まれています。
具体的には
- 売り手企業の経営者自身もしくは第三者を通じて一定期間、同じ業界で事業をおこなうこと
- 売り手企業の経営者自身もしくは第三者を通じて同じ業界の会社の役員や従業員として働くこと
- 同じ業界の会社に出資したり経営に参画すること
- 売却した会社もしくは買い手企業の役員や従業員を自身の新規事業に勧誘すること
などを制限しています。
これにより、顧客や従業員の流出を防ぎ、買い手企業が買収した事業の価値を保護します。
競業禁止の期間や範囲は契約によって異なりますが、一般的には3年〜5年という期間が設けられることが多いです。また契約内容によっては、地域を限定することもあります。
新規事業を立ち上げる場合は買い手企業の承認を受ける
上記に加えて、売り手企業の経営者が新規事業を立ち上げる際には買い手企業の承認を得ることが求められる場合があります。
これは売り手企業の経営者の新しい事業が買い手企業の買収した事業に競業しないことやマイナスの影響を与えないことを確認するためです。
そもそも売却したあとに、競業する事業をやるというのは倫理観的にもいかがなものかと思いますが、実際にそういうケースがあるので株式譲渡契約で取り決めをしているということですね。
売り手企業の経営者としては、売却した会社がさらに成長することを応援する姿勢でいたいものです。
禁止される事業分野
「もし新規事業をやる場合は、アダルト事業はご遠慮いただきたいのですが…」
同業、競業に限らず、禁止される事業分野が指定されるケースもあります。
僕の場合、売却後にアダルト事業を立ち上げることは禁止と伝えられました(特に予定はありませんでしたが)
買い手企業としては、買収した会社の元経営者がアダルト事業をおこなっているとなると、会社の評判やブランド価値に影響を与える可能性があるため、あえて具体的に指定して禁止したいとのことでした。
理由に納得しましたので、同意しました。
買い手企業とは良好な関係性を維持する
「株式譲渡をしたらもう事業はやらないでのんびりするぞ!」と決めていても、FIREして暇だったり、さまざまな人との交流の中でビジネスアイデアが出てきたりで、再び新規事業を始めたくなる元経営者は多いようです。
買い手企業に都度確認し、承諾を得ることで、基本的には新規事業の立ち上げは可能ですので、株式譲渡契約での制約についてはお互いに話し合って取り決めたうえで、買い手企業と定期的なコミュニケーションをとって良好な関係を築いておくことが大切だと思います。