M&A仲介会社の営業手法の「最低でも10社以上の引き合いがあります」はホント?

M&A仲介には、さまざまな売り手企業向けの営業手法があるようです。

その中に「最低でも10社以上の引き合いがあります」というたいへん魅力的な営業手法があります。

引き合いとは、買い手企業との面談のことです。

とても興味深いお話なので、この営業手法について書いておこうと思います。

目次

「最低でも10社以上の引き合いがあります」はホント?

結論から書くと、本当です。

M&A仲介会社の担当さんに
「10社からの引き合いがあるというのは本当ですか?」
と確認したら

「本当です!!」→「なので心配なく、我が社にM&A仲介のご依頼ください!」と仲介委任の話に進んでいき、そして仲介の依頼をすれば実際に「10社の引き合い」が用意されるはずです。

引き合いがたくさんあることの意味や魅力

引き合いがたくさんあるということは、

  • このM&A仲介会社さんは営業力が高いのだろう
  • このM&A仲介会社さんは、買い手企業からの依頼や実績が豊富にあるのだろう
  • 引き合いがあるということは、売り手企業が選べる立場になれるぞ
  • 複数の買い手がいるということは、売却価格も高くなるに違いない
  • 少なくとも、自社の売却が上手く行かないことはないだろう

という予想が成り立ちますし、これらを皮算用してドキドキしてしまうと思います。

M&Aは引き合いの数が重要なのではない

改めて確認しておきたいのは、
M&Aで重要なのは「条件の見合う買い手企業との最終合意」と「デューデリジェンスを経てのPMIの達成」です。

仲介の依頼をした後に、自社の企業概要書(IM)が作成される前に、営業手法的に保証されている引き合いというのは、「自社の企業概要書(IM)を熟考した上で、買収に興味を示している買い手企業ではない」ということです。

もっと言うと「情報収集も含めて、買収の予算が見合う売り手企業と積極的に面談をしたい会社」「買収は望んでいるけれど買い手都合の会社」が世の中にはたくさんあるということです。

本気度の低い買い手企業との面談はロスが多い

買収の本気度の低い買い手企業との面談は、その入口が「買収したい」ではなく、「買収したいかどうかを見定めたい」がスタートなので、これらの会社と多数面談していくのは、ゴールが遠く、骨の折れる作業です。

もちろん、たくさん面談をこなすことでM&Aの経験を積むとか、場馴れするとかのメリットもあります。

でも、この手間を売り手企業が担うのは、M&A仲介会社さんに依頼するメリットが半減してしまうように思うのです。

買収に本気の買い手企業さんだけ来てください

M&Aはすべての案件が独自で条件が異なります。
ですので必ずしもすべてのケースで正解ではないと思いますが、私の場合は、買い手企業さんにも一定の条件を設けさせてもらいました。

  • M&A仲介会社からの企業概要書(IM)の説明を受けてもらう(売却金額の目線も案内)
  • 買い手企業との面談は、取締役以上とのトップ面談のみ
  • トップ面談の場所は、基本的にこちらの本社のある都道府県
  • 事前の質問は歓迎

また、買い手企業にも着手金が発生するM&A仲介会社さんに仲介の依頼をしました。

本気の買い手企業をどれだけ紹介してくれるM&A仲介会社か

その結果、トップ面談をいただけた複数の買い手企業さんはいずれも意向表明の期限まで深く深く協議を重ねさせてもらうことができ、そのうちの一社と最終合意を締結させてもらうことができました。

私の経営者人生にとっても、本当に価値ある時間となりました。

M&Aは引き合いの数以上に、M&A仲介会社さんが、どんな背景や動機で、どんな質の引き合いを紹介してくれるかのほうがより重要だというお話を書かせてもらいました。

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